おいしい味がきちんと伝わるレシピをー『レシピの書き方』

レシピは必ず誰かのために書かれている。例えば料理教室の生徒のため、料理本の読者のため、料理ブログの愛読者のため、父母の味を再現したい子供のため、未来の自分自身のため。だからこそ伝える力を持つレシピを作りたい。レシピをちゃんと読めるようにな…

知性についての新しい姿を描くー『教養としての認知科学』

『教養としての認知科学』を読みました。いますぐ人に話したくなる内容もりだくさんの本でした。タイトルからも窺い知ることが出来る通り認知科学の入門書であり、青学・東大の人気講義を書籍化したものです。 教養としての認知科学 作者: 鈴木宏昭 出版社/…

ザビエルのあとに続く―『神父さま、なぜ日本に?』

表紙のお写真に目がとまり、続いて表紙に書かれた「ザビエル」の文字が気になって手に取りました。『神父さま、なぜ日本に? ザビエルに続く宣教師たち』を読みました。一般流通書籍ではありますが、書店で探して迷わず購入するのは信徒の方々だろう本ですの…

ドナ・ジョー・ナポリ『バウンドー纏足』

『バウンドー纏足』を読みました。日本語で紹介されているドナ・ジョー・ナポリの本はこれで全て読んだでしょうか。 バウンド―纏足 (YA Dark) 作者: ドナ・ジョーナポリ,Donna Jo Napoli,金原瑞人,小林みき 出版社/メーカー: あかね書房 発売日: 2009/03 メ…

食べ物の言語という窓を通して―『ペルシア王は「天ぷら」がお好き?』

『ペルシア王は「天ぷら」がお好き?』を読みました。食事中に披露できる面白い話満載でした。 ペルシア王は「天ぷら」がお好き? 味と語源でたどる食の人類史 作者: ダン・ジュラフスキー,小野木明恵 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2015/09/17 メディア…

どうしても見つけ出したいと考えた―『才女の歴史』

歴史上におそらくは存在したであろう女性教養人はいったいどこにいってしまったのか。人間の歴史とともにあるはずの学問の歴史と発展に、女性の関わりはなかったのだろうか。本書は、著者が抱いた疑問を元に、膨大な資料から25人の諸学で功績を残した女性教…

ジム・シェパード『わかっていただけますかねえ』

感情というのは手に負えない。感情に向かって何か言うと、向こうはべつのことを言ってくる。子供の頃、本で子供のことを読んでも自分に出会うことはまったくなかったけれど、大人について読むと、自分がいた。それはいつもわたしを喜ばせてくれた。今はなん…

課題本について『よう、どう思った?』なんて聞くんだ―『プリズン・ブック・クラブ』

アン・ウォームズリー著『プリズン・ブック・クラブ』を読みました。本をもっと読みたくなる名著でした。 プリズン・ブック・クラブ--コリンズ・ベイ刑務所読書会の一年 作者: アンウォームズリー,向井和美 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店 発売日: 2016/08/3…

その時代に生きた人の率直な手紙―『注目すべき125通の手紙』

『注目すべき125通の手紙』を読みました。とても面白かったのでご紹介します。 注目すべき125通の手紙:その時代に生きた人々の記憶 作者: ショーン・アッシャー,北川玲 出版社/メーカー: 創元社 発売日: 2014/12/10 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (…

わたしたち園芸家は、未来に対して生きている。―カレル・チャペック『園芸家の一年』

プラハが舞台になっている映画や小説を楽しむと、いつもチェコという国は「オタク国」だなと薄らと感じてしまう。もちろんオタク魂を持った人は世界中にいる。でも、国としてのオタク国となるとイギリス、日本、そしてチェコが思い浮かぶのです。それぞれ蒐…

もしも愛する人の背中をタランチュラがテクテク登っていたらどうする?―『その道のプロに聞く 生きものの持ちかた』

年度末でアナコンダに噛まれたレベルで生活ズタズタなのですが『その道のプロに聞く 生きものの持ちかた』がとても面白かったのでご紹介します。 その道のプロに聞く生きものの持ちかた 作者: 松橋利光 出版社/メーカー: 大和書房 発売日: 2015/08/12 メディ…

どんなものでも自由に作れる―『レゴはなぜ世界で愛され続けているのか』

子供が部屋中にばら撒いたカラフルな直方体を素足で踏んで今日も叫ぶ。ソファーの下にも掃除機の中にも存在する愛しくも憎いあのレゴブロックを作る企業の歴史と経営戦略の遷移を書いた『レゴはなぜ世界で愛され続けているのか』を読みました。原題は「Brick…

読者の心のなかにある固有の空間―『「場所」から読み解く世界児童文学事典』

『「場所」から読み解く世界児童文学事典』を読みました。 「場所」から読み解く世界児童文学事典 作者: 藤田のぼる,目黒強,川端有子,水間千恵,宮川健郎 出版社/メーカー: 原書房 発売日: 2014/05/26 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る どんな本…

子どもを幸せにするひとつの手だて―『子どもと本』

『子どもと本』を読みました。 子どもと本 (岩波新書) 作者: 松岡享子 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2015/02/21 メディア: 新書 この商品を含むブログ (13件) を見る 帯には「『子どもの図書館』(石井桃子著)刊行から半世紀……「その後」は?」とあり…

その後のことは、よくわからない―『モーツァルトの息子』

先日までガリレオの娘さんに関しての本を読んでいた流れで、ふと表題が気になって池内紀さんのエッセイ『モーツァルトの息子 史実に埋もれた愛すべき人たち』を読みました。 モーツァルトの息子 史実に埋もれた愛すべき人たち (知恵の森文庫) 作者: 池内紀 …

このうえなく高名で親愛なる父上様―『ガリレオの娘』

青コ~ナ~、近代科学の父、ガリレオ・ガリレイ~!赤コ~ナ~、ローマ教皇、ウルバヌス8世~!科学と宗教の分裂、対立の象徴として、今なお語られる17世紀のガリレオの裁判、即ち彼の記した『二大世界体系に関する対話』で、聖書に反するコペルニクスの地…

ただの病名を、血の通った人間へ―『アルツハイマーはなぜアルツハイマーになったのか』

『アルツハイマーはなぜアルツハイマーになったのか』を読みました。 アルツハイマーはなぜアルツハイマーになったのか 病名になった人々の物語 作者: ダウエ・ドラーイスマ,鈴木晶 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2014/05/22 メディア: 単行本 この商品を…

青い鳥文庫で科学リテラシー―『七時間目』シリーズ

子供に科学リテラシーを身につけてもらいたいと考える全国の保護者及び先生及び通りすがりの皆様におかれましては、どのようにリテラシーを学ぶ糸口を見つけるかということで日々悩んでいることと思われます。私はといいますと、前段階としてリテラシーとは…

私を芸術家にした怪物たち―『センダックの絵本論』

『センダックの絵本論』を読みました。 センダックの絵本論 作者: モーリスセンダック,Maurice Sendak,脇明子,島多代 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1990/05/25 メディア: 単行本 クリック: 3回 この商品を含むブログ (6件) を見る モーリス・センダッ…

海の五角形、棘皮動物―『ヒトデ学』

小説を読んでいて新しい登場人物が出てきたとき、その姿を思い浮かべてみる。しかし、それがうまくイメージできない時もあります。テッド・チャンの『あなたの人生の物語』に登場する異星人ヘプタポッドはなかなか思い描きにくい姿をしていました。曰く、七…

かはくさんぽ―国立科学博物館

かはくさんぽ(0)はじめに 国立科学博物館 日本館 ネオルネサンス様式の建物自体が国の重要文化財 正面には神殿のような石の柱。 上野の「かはく」こと国立科学博物館といえば老舗で大御所で超有名博物館。解説書籍もネット上の見所案内も充実しており、い…

評価されない人気者―『二人でノンタン』

墨の線はまっすぐではなく、ぶるぶるふるえているような線ですが、決して緊張のために手がふるえたわけではありません。最初、ネコのふわふわした毛並みの感じを出そうとして描いたもので、画面全体も柔らかなものにするため、建物も花も木もみんな動物と同…

猫はサイエンスがお好き―『真夜中に猫は科学する』

真夜中に行われる猫の集会と言えば、ミュージカル「CATS」が思い浮かびます。舞台だけではなく客席にも自由自在に登場する猫たちが主役で、人間の登場はありませんが、舞台の存在そのものから猫という生き物に対する人間の特別な愛情(ちょっと片思いっぽい…

男の子と女の子の『妖怪ウォッチ』

本屋の絵本コーナーの片隅には子供用雑誌が置かれており、先日久しぶりにのぞいてみたら驚きの赤。小学館の学年誌である『幼稚園』『小学一年生』『小学二年生』は全て表紙に赤い猫のキャラクターが描かれている。そう、昨年2014年に子供世界のカルチャーを…

朝ドラ「松谷みよ子」がみたいです。―『自伝 じょうちゃん』『小説・捨てていく話』

むかしむかし、きのうのきのうくらいむかし、じいさまとばあさまがありました。じいさまは山へ毎日木を伐りに行っていましたが、あるとき、弁当を食おうとひろげたら、雀がみんな食べてしまっていて、くうくう昼寝をしていました。あんまり可愛いので懐に入…

あたしもひとりぼっちなのよ―『秘密の花園』

子供のための絵本を古書店やバザーなどで物色していると、すぐ隣に児童書コーナーがあることに気づきます。私は児童書をあまり読んだ記憶がないので、投げ売りのような価格になっているそれらが新鮮で、新しい狩場を見つけたような気分です。これから子供を…

お手紙ちょうだいね。―『チャリング・クロス街84番地』

先日、知人から「ロンドンには児童書の挿絵専門のギャラリーがある」と聞き、弥生美術館のようなところかと想像しているのですが、場所は、やっぱりというか案の定というかチャリング・クロス街らしい。 チャリング・クロス街といえば、なんといっても『チャ…

山田風太郎『育児日記』

赤ワインを赤ちゃんに飲ませて寝かしつけをしちゃう山田風太郎の『育児日記』を読みました。 山田風太郎の『育児日記』は昭和29年の長女 佳織さんの誕生から中学入学まで(長男 知樹さんは誕生から小学四年まで)の子供の観察日記です。普段の日記から子供に…