おいしい味がきちんと伝わるレシピをー『レシピの書き方』

 レシピは必ず誰かのために書かれている。例えば料理教室の生徒のため、料理本の読者のため、料理ブログの愛読者のため、父母の味を再現したい子供のため、未来の自分自身のため。だからこそ伝える力を持つレシピを作りたい。レシピをちゃんと読めるようになりたい。でもそれって超難しいっすよね~ってことで、本に助けてもらいましょう。

レシピの書き方

レシピの書き方

 
おいしさを伝えるレシピの書き方Handbook

おいしさを伝えるレシピの書き方Handbook

 

『レシピの書き方』は廃版ですが、最近加筆されて『おいしさを伝えるレシピの書き方Handbook』が登場しました。やったね。 

『レシピの書き方』は数十年にわたって料理本、料理雑誌でレシピ校正を続けてきたレシピ校正者が至れり尽くせり手取り足取りで伝授する、レシピ作りの教科書とも言える本です。

 

 「レシピの書き方には、ただひとつの正解があるわけではありません」とは言うものの、巷にあふれるレシピにはわかりにくいものも多くあります。先日ネットで見つけた美味しそうな写真付きレシピは、写真では炒めたタマネギを使っているように見えるのに、料理手順のどこにもタマネギを炒める工程がなく、素直な鳥類である私は生タマネギを持て余してしまいました。目にしみる。きっと美味しい料理なのだろうけれども、なんでだろう、涙が出るよ。
 一方で、レシピを書いてネットでササッと発表しようとすると、「適量」と「適宜」の言葉の使い分けが分からず辞書を引き、ほうれん草と小松菜の単位は「束」だったか「株」だったか混乱し、ちっともササッと書けない。レシピって読むのも書くのも実は難儀なものなんじゃないの。なんかフィーリングで鼻歌交じりに適当に扱ってるけれどさ。

 

 本書は四つの章で構成されています。「第1章 レシピとは」は同じレシピを3パターンで書くことで基本的なレシピのパターンを紹介するところから始まり、わかりにくいレシピの例を挙げて修正して見せてくれる。書き方の全体の流れを紹介した後に、煮物・揚げ物・炒め物などの調理法ごとのチェックリストと解説があり、自作レシピの添削が出来るようになっています。校正の仕事に思いを馳せることもできる章です。

 

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肉じゃがレシピの修正。トマト祭の勇者みたいに赤くなっている。


「第2章 調理の言葉」はレシピに登場する独特の言い回しを含めた、基本的料理用語の解説。レシピを書くときは勿論ですが、レシピを読む際にも必要な知識がまとまっています。例えば火加減の弱火、中火、強火はそれぞれコンロの火が鍋やフライパンに対してどのような状態を指すのか。当たり前のようですが、知らなければレシピを正確に読み取ることは出来ないでしょう。

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水の量の説明。ひたひたって、レシピの中と怪談でしか使ったことない言葉です。


「第3章 材料の言葉」は、家庭でよく使われる材料についての特徴や下ごしらえの方法の解説となっています。鶏もも肉と鶏胸肉はスーパーでは精肉コーナーで並んで売られていることが多いですが、それぞれどういった特徴があり、どのような調理方法が向いているのか。そもそも私たちがよく食べる鶏肉というのは生後何週間の鳥なのか。地鶏ってなんですか。などなどの説明と共に、レシピにそのまま使える言い回しが沢山挙げられている。
「第4章 レシピの活用」はネットでのレシピ公開方法を「クックパッド」を例に紹介。また、おいしそうな料理の写真の撮り方について触れています。

 

 雑誌の料理コーナーや、ネットで人気のあるレシピを見ると、最近の流行は手軽さをウリにしたものなのだなと感じます。「10分でできる」「とっても簡単」「材料はこれだけ」というアピールが求められている。誰もが忙しいので納得できるのですが、その手軽さを伝えるレシピは決してお手軽には書けないし、読めない。殴り書きのレシピでは美味しさは伝えられません。雑な読み方をしていては美味しいはずの料理が楽しめない。レシピがあふれているからこそ、どんなレシピがよいレシピなのか自分の中に軸が欲しいですよね。