課題本について『よう、どう思った?』なんて聞くんだ―『プリズン・ブック・クラブ』

 アン・ウォームズリー著『プリズン・ブック・クラブ』を読みました。本をもっと読みたくなる名著でした。

プリズン・ブック・クラブ--コリンズ・ベイ刑務所読書会の一年

プリズン・ブック・クラブ--コリンズ・ベイ刑務所読書会の一年

 

 カナダ在住の女性ジャーナリストが、「刑務所読書会支援の会」で活動する友人にちょっと強引に誘われて刑務所内の読書会に参加し、受刑者との交流をはかるノンフィクション。男性受刑者たちに囲まれての読書会というのは、8年前にロンドンで強盗に襲われ命を落としかけた経験がある著者にとってはハードルが高い。それでも著者は、判事であった亡き父親の言葉「人の善を信じれば、相手は必ず応えてくれるものだよ」を抱えてトロント近郊のコリンズ・ベイ刑務所に赴き、受刑者たちの読書会に参加することになります。

 読書会で取り上げる本はフィクションもあれば、自伝や回顧録、ハウツー本もあり、新しい話題の本から古典的名著までさまざまです。

 ノンフィクションなので、決してわかりやすい筋書きが用意されているわけではありません。一冊の名著によって受刑者が悪人から善人に生まれ変わるというような、単純な物語はありません。それでも、読書っていいなと思える。
刑務所読書会を通して数々の名著について激論を交わす場面はわくわくします。読書会のメンバーは、ある時は課題本の著者の矛盾を指摘し、ある時は連鎖する意見によって本を掘り起こし、ある時は多くの人の心に生涯残るかもしれない美しい感想を述べる。犯罪に関しての本、虐待や貧困に関しての本、人種差別や女性差別に関しての本への彼らの発言は、読書に対する切実な思いが伝わってくる。

 本を読み、話し合うことが、異なる人生をおくる人を繋げるという刺激的な希望のようなものを感じます。